第13回SOU-JR総持寺駅アートプロジェクト
「す」、「し」と「せ」のあいだ
"su", between "shi" and "se"
黒宮菜菜 Nana Kuromiya
鋤柄ふくみ Fukumi Sukigara
2024年3月31日- 2024年10月5日
私たちが生きる世界には様々な相対性とその関係があります。その相対性はある時に隔たりを生み出します。物理的な隔たりや、観念的 な隔たり、人の心情的なものから生まれた隔たりなど。私たちはそれら様々な関係をめぐり、想いを馳せ、イメージを膨らませます。そし て時には抵抗し、時には戦います。しかし、こちら、あちら、じつはその間に私たちは存在するのではないでしょうか。
例えば、死と生、私と世。「し」と「せ」。
黒宮菜菜と鋤柄ふくみのふたりの作家は、「その間」を独自の眼差しによって観察し、探り続けます。その関係をつなぐこと、越えること。「そ の間」は人の想像だけでは及ばない何かを感じさせてくれます。それは同時に、こちらと向こうの存在をより意識させ、私たちが今ここ にいることを改めて教えてくれます。
作家が描くひと筆は「し」と「せ」の間にある「す」に触れることなのです。
SOU の多くの作品は、株式会社ニューリーによる非常に特殊なスキャニングによって、大きな画面に必要な高解像度データを確保して います。今回はさらに表面の起伏の大きい作品を焦点距離を変えた最大 7 層の撮影を行い、画像を合成することにより、非常にリアル な物質感を表現することができました。単に絵ということを超えた作品の物質感を体感していただければと思います。
黒宮菜菜
Nana Kuromiya
黒宮菜菜(くろみやなな・1980 年生)
わたしの油彩作品は、淵に絵具で土手を作った器状のキャンバスに蜜蝋や絵具やオイルなど、さまざまな物質を溜め込んで制作されます。今回の作品には、本物の植物を入れ込んで描かれたものもあります。凸凹の画面に絵を描くことは、なかなかままなりません。でも、自分の意思だけでなく、素材に寄り添いながら制作することで、見たこともない効果や神秘的な風貌が生まれるのです。自分を超えた何かの力を借りてくること。それは、わたしの制作にとってとても重要なことです。
Holding a bird #6 / 鳥を抱く#6
木製パネル、 綿布、ジェッソ、油絵具、蜜蝋、葦(アシ)、ヒカゲノカズラ、ケイトウ
74 × 94 × 5.5 cm
2023年制作
AWOHITOKUSA #2 / アヲヒトクサ#2
木製パネル、キャンバス、ジェッソ、油絵具、オイルパステル、蜜蝋、パラフィン
54 × 47 × 6 cm
2022年制作
鋤柄ふくみ
Fukumi Sukigara
鋤柄ふくみ(すきがらふくみ・1982年生)
描いているとき、絵に触れながら、同時に、自分のからだに触れているように感じます。絵具やクレヨンを持つ手に導かれて、絵の中を潜ったり、画面のあちらとこちらを行ったり来たりしているとき、絵の中にぐんぐんと体を押し込めて、世界に触れる実感を得ようとしているのかもしれません。
私の畑
キャンバス、油絵具
72.7 × 91 cm
2018 - 2023年制作
私と私の小指人形
紙、クレヨン、ガッシュ、布、油絵具
33 × 25.3 × 5.7 cm
2010年制作