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第8回目の展示は、林青那さん・小早川桐子さん・中井浩史さん・澤井玲衣子さんの 4 作品を紹介します。

今回の作品はそれぞれの作家が持つ筆跡とそれぞれの表現(ことば)をテーマにします。

これらの作品はとてもシンプルで直接的な技法で描かれています。その表現の向こうに作者は何を語ろうとしているのでしょうか?

作家はそれぞれ独自の方法で目には見えないもの、知らないこと、わからないものに対して真摯に向き合い世界を探ります。それぞれの絵は、みる者にさまざまな想像を許し、自由な解釈をさせてくれます。 それによって作者と私たちの間には、表現と解釈のコミュニケーションが生まれるのです。

それは言語としてのことば以上の雄弁な「ことば」ではないでしょうか。

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林 青那 「KUROMONO

2018年制作  作品サイズ:482×444 ㎜

紙に墨汁

林青那さん(はやしあおな・1989年生まれ)は、大胆に描かれた形象には墨一色の表現の中にも豊かな濃淡が含まれ、意志の強さと同時にみるものを受け入れる包容力が両立されているようです。その原初的な表現は、「絵と呼ばれる以前の絵」を生み出そうとしているのではないでしょうか。社会的な既存の意味や価値を取り除いていくことによって描かれた作品は、作者だけが獲得した「ことば」となり説得力を持って私たちに迫ります。

 

「壁紙の裏に筆と墨汁を用いて描いた抽象作品です。 抽象を描くことは自分の中の原始を探るような行為であり、そこに意味や哲学は存在しません。 無に近い状態で筆を動かし、図が出来上がります。 無意味・無意識なものにこそ造形の面白さが生まれます。」 林青那

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小早川 桐子  「梅」

2016年制作 作品サイズ:455 × 455㎜

キャンバスに油彩

画面全体を覆う豊かな色彩と複雑なレイヤー(重なり)から生まれる小早川桐子さん(こはやかわきりこ・1984年生まれ)の絵は、知らない間に私たちの感情や思考をも無くしてしまうかのようです。決して過剰にならずまた解釈することを求めない、足されることも引かれることもないその表現は、いつまでも眺めていることができる水面や星空のようであり、終わりのない時間を与えてくれます。

 

「この絵のモチーフは、散歩をしている時に見かける、なじみのある梅の木です。花が咲いているところを描きました。形にとらわれない表現をしたいと思って、抽象表現をしています。花や枝に出会ったときに感じられる、空気が記憶に残って、自然に表現できたらと思います。」 小早川桐子

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中井 浩史 「Untitled」

2012年制作  作品サイズ:320 × 408mm

紙に油彩、アクリル

中井浩史さん(なかいひろし・1961生まれ)は長年にわたり果敢に画面と向き合い続けます。絵画への考察と破壊との往復は、自分を問い、自分に問われることを繰り返し、問われた答えは前に進むための道標として必要となります。作家は意識と無意識のバランスが大切と語り、画面を支配するばかりではなく、受け入れるという制作の態度は、作家の世界との向き合い方そのものではないでしょうか。

 

「このドローイングは10年ほど前に制作したものです。ドローイングの原点でもある「線を引く」という動作は、絵画のいろいろな成立過程を遡ったところにあります。わたしが意思を持って「いまここに線を引く」こと、その原初的な動作が唐突に生み出す「かたち」には、見る者の感覚を外に向かって軽やかに開放してくれる力があると感じています。」 中井浩史

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澤井玲衣子  「piano note No.2」

2008 年制作  作品サイズ:337 × 348 ㎜

和紙に墨

私たちは誰もが個々のペースを持ち、人それぞれ違うリズムで生きています。 澤井玲衣子さん(さわいれいこ・1977年生まれ)は静かな時間の中で、確信を持って丁寧に画面に線を置きます。作者の筆は指揮者のタクトのようにリズムを刻み、軽やかに、伸びやかに動きます。作者の持つ固有の時の流れから生まれた筆跡と淡い墨は、いそぎ足の日常をふと立ち止まらせてくれます。

 

「ピアノや楽譜を題材に墨で音を描きます。画面の中にはのびやかな音や足早にすぎる音などさまざまなリズムを連想する線や点があります。澤井は毎週ピアノ教室に通っており、「pian note No.2」は当時練習していた曲をイメージして描きました。ピアノを通して音を奏でる楽しさを知っている澤井が、墨によって再び音の世界を紡いだ作品です。」  社会福祉法人わたぼうしの会 たんぽぽの家アートセンターHANA・金澤優希

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